- 今や中小企業や街の小さなお店でもホームページを作成し、商品やサービスの紹介だけでなくネットショップを運営することが多くなりました。インターネットの普及で、企業規模に関わりなく全国を商圏としてビジネスが展開できるようになったのです。
しかし、長年自分の商品名やサービスのネーミングで商売をしていた中小企業やお店がホームページを開設してビジネスをしていたところ、思わぬ所から「商標権侵害だ!」と警告状を送りつけられるケースが最近増えています。類似する商品名やネーミングをすでに誰かが商標登録していたのです。
この場合、「長年使っていた商品名だから」という理由だけでは商標権侵害は免れません。その商品名が使えなくなるだけでなく、最悪の場合、相手から損害賠償を請求されることもあます。
相手の商標登録出願よりも前から相手の商標の存在を知らずにたまたまその商品名などを使用していたという事情がある場合には、引き続き自分の商品名などを使用し続ける権利も商標法では認められていますが(いわゆる「先使用権」といいます)、その事情を立証する責任はあなたの側にありますし、それを立証することは意外と難しいのです。
しかも、仮に先使用権を得られたとしても、認められるのは従来からの使用方法だけなので、今後のビジネス展開においてとても窮屈なハメになる場合も多いのです。
■商標調査の重要性
- こうしたトラブルを避けるためには、まず自分の会社やお店の商品名などが他人の登録商標と同一または類似でないか、あらかじめ調査しておく必要があります。
これが商標調査です。
もし同一または類似の登録商標が発見された場合には、商標権侵害にならないようにその商標を使用する商品やサービスを注意深く選ばなくてはなりませんし、そうはいかない場合には、涙を飲んで商標自体を変更する必要もでてきます。
幸いにも同一または類似の登録商標がなかった場合は、早急にあなたが商標登録出願をして権利を確保することをお勧めします。
というのも、最近では商標登録を悪用してお金儲けをもくろむ輩が増えているからです。
つまり、ある地方で商品名やネーミングがそこそこに有名になった会社やお店をターゲットとして選び、先にその商品名などに類似する商標を先取りして登録しておくのです。
そして、その会社などがビジネスを全国展開し始めた頃を見計らって登録商標を盾に使用差止を請求し、高額の和解金や商標権の買い取りを要求するという手口です。
もちろん、その会社などが商標登録出願をしても先に押さえられているので登録を受けられず、登録をあきらめるか、やむなく相手の商標権を買い取らざるを得ないことになります。
これに対しては「取消審判」を請求して相手の商標権自体をツブすという対抗策もありますが、必ずしも成功するとは限りませんし、費用や時間もかかりビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
ですから、自分の会社やお店の商品名などについては、「長年使っているから」と安心することなく、少しでもビジネスを拡大しようとお考えなら、あとあとの思わぬトラブルを防ぐためにも、ぜひ一度商標調査をしてみることをお勧めします。
■登録商標の調査
- 登録商標の簡単な調査ならご自分でもできます。特許庁のホームページにある「特許電子図書館(IPDL)」の商標検索サービスは無料で利用でき、利用方法もそれほど難しくはありません。
●特許電子図書館(IPDL)商標検索 → こちらへ
商標検索をすれば、ご自分が使用あるいは登録出願したいとお考えの商標と同じような商標がすでに出願あるいは登録されたりしているかどうか知ることができますので、ある程度は使用の安全性や登録の可能性の見当をつけることができます。
しかし、これだけでは十分とはいえず、次のような判断が必要となる場合があります。
@ご自分の商標が他人の登録商標(出願商標)と類似しているかどうか?- 類似してるかどうかは、外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(イメージ)という3つの要素を総合的に判断して行いますが、その商標を使用する商品の需要者層や取引の実情なども考慮されるため、場合によっては高度な専門的判断を要します。
Aご自分の商標が他の商標に対して区別できるだけの特徴を有しているか?- 出願される場合には、その商標が他と区別できるだけの要件(「自他商品・役務の識別力」といいます)を備えていることが必要です。一見、十分な特徴を有していても様々な理由で識別力なし、とされる商標も多くありますので、やはり専門的な判断を要する場合があります。
Bその他の判断- 使用する商品などがまったく異なっていても、大企業の有名(著名)な商標と混同されるおそれがないか、など、その他の検討事項もあります。
また、IPDLには特許庁に登録されているか、あるいは出願されている商標のデータしかありませんので、重要な商標については他の有料のデータベースを利用したり専門家に調査を依頼したりするべき場合もあります。
このように商標調査は単に調べれば済む、というものでは必ずしもありませんから、ぜひ一度ご私どもに相談いただければと思います。