小売等役務商標制度について

■小売等役務商標制度とは?
  •  小売業者や卸売業者が店舗の看板や店員の制服、ショッピングカートなどに使用する商標(マーク)について商標登録をして商標権としての保護を受けられる制度で、平成19年4月1日からスタートしました。

     これまでも、商品に付ける値札や商品などを宣伝するチラシ・パンフレットなどに使用する商標(マーク)は商標登録を受ければ他人の模倣などを止めさせたりすることができました。
     しかし、商標登録は必ず個別の商品やサービスを指定しなければなりませんでしたので、多くの種類の商品を扱う小売店や卸売業の場合、多数の出願をしなければならず出願・登録の料金がかさむ上、看板や制服といった個別の商品とは直接対応しないものに包括的に使用するマークは商標登録ができないという問題がありました。

     この新しい制度により、どんな商品を取り扱う小売業者等であっても「小売サービス」という一つの分野で商標権を取得できるようになり、より安いコストでお店の信用を守れるようになるだけでなく、カタログ販売やテレビショッピング、インターネット通販といったビジネスを展開する場合に使用する様々なマークも登録商標として守ることができるようになる、といったメリットがあります。

     ちなみに、小売等役務商標の登録を受けるために特許庁に支払う手数料は次の通りです。

    出願料 21,000円/件 
    (なお、電子出願ではなく書面出願の場合は別途1,200円+700円×書面の枚数分の手数料が必要となります。)
    登録料 66,000円/件
    登録更新料 151,000円/件 (10年ごとに更新が必要です)
    ※従来は商品区分の数だけ、これらの手数料が必要でした。


■小売等役務商標制度でどんなマークを守れるか?
  •  取扱商品の値札につけるマークはもちろん、折り込みチラシ、価格表、レシート、ショッピングカート、買い物カゴ、陳列棚、会計用レジスター、店舗の看板、売場の案内板、売場の名称、店員の制服や名札、レジ袋、包装紙などに付けるマークも役務商標として商標権で守れるようになります。また、テレビ広告やインターネット販売のサイトで使用するマークも保護対象となります。

     ですから、すでに個別の商品についてのマークの商標権を取得している小売業者であっても、さらに小売等役務商標の商標権を取得することで、さまざまな営業展開に対応してスキのないマークの防衛ができるようになるのです。


■他人が自分の小売等役務商標(マーク)を先に登録したら?
  •  そもそも「鈴木商会」「田中商店」「三河屋」といった多くの事業者が使用している店名などは、それが全国的に有名になったものでない限り登録されませんし、自分の会社の商号と同じ名称を他人が登録することもできません。
     また、仮に他人が登録してしまっても、平成19年4月1日以前から使ってこられた商標なら、その範囲内で従来通り使い続けることができます。
     ただ、登録した権利者から、需要者が混同しないような表示(営業地名など)を付けて使うように要求される可能性はあり、その場合は当事者同士での話し合いとなります。

     一方、あなたの商標が先に複数県程度の範囲で有名になっているような場合にも、他人がその商標と混同が生じるような商標について登録を受けることはできません。
     もし登録されてしまった場合にも、特許庁に対してその登録の取消しや無効を申し立てる方法があります。

     このように、小売等役務商標制度は中小企業や街のお店でも、自分の商標(マーク)とそれによって勝ち得た信用を、これまで以上に上手に防衛することができる制度といえます。

     関心をお持ちの経営者の皆様は、ぜひ一度私どもにご相談いただければと思います。
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