- 内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の手紙を出したのかということを郵便局が証明してくれる書留郵便の制度です。
法律的には「差出人の意思表示に証拠力を与える」ことができる方法で、それ自体になんら法的な強制力はないものの、事実関係を証明するものとして裁判においても有効な証拠となりえます。
最近では消費者契約法や特定商取引法を活用しクーリング・オフの通知などに盛んに利用されており、悪徳商法業者への消費者の対抗手段のひとつとして知られるようになっています。
内容証明の書き方や出し方については様々な書籍やサイトで紹介されています。
また、今では日本郵政公社が、インターネットで手軽に電子内容証明を送れる「e内容証明」というサービスまで行っています。
●内容証明専門行政書士 丸田法務事務所のサイト → こちらへ
●日本郵政公社「e内容証明」のサイト → こちらへ
■内容証明郵便利用のメリット・デメリット
- 内容証明郵便は裁判での証拠にもなるのは確かですが、その最大のメリットは
●相手に対して心理的プレッシャーをかけて対応を促すこと
●消滅時効を一時的に食い止めること(※)
(※ 例えば貸金債権の消滅時効は10年ですが、時効完成直前に内容証明郵便で返済を督促すれば時効は停止します。ただし、その日から6ヶ月以内に裁判上の請求を行う必要があります。)
にあります。
つまり、法律的に何らかの落ち度や問題のある相手方が、こちらの主張を無視したり知らばっくれたり、のらりくらりと時間稼ぎしたりさせないようにして、費用と労力のかかる裁判に訴える以前の段階で善処させるための手段といえるでしょう。
ただし、内容証明郵便は相手にとっての証拠にもなりますから、使い方によっては送った側の不利益になる可能性もあります。
また、心理的プレッシャーをかける「宣戦布告」のようなものである以上、話し合いで解決できる可能性のある相手や誠意を見せている相手に対してうかつに送ってしまうと、かえって相手の態度を硬化させ、まとまる話し合いもまとまらなくなる危険性もあるのです。
■知的財産権侵害への対応としての内容証明
- 著作権や意匠権、商標権といった知的財産権が侵害された場合にも、上のような内容証明郵便のメリット・デメリットを勘案した上での対応が必要です。
まず、侵害の内容とそれにより自分にどんな不利益(損害)が発生しているか、放置しておくと今後どんな損害が発生するおそれがあるかを確認すると同時に、侵害している相手について可能な限り調べるべきです。
その上で、相手が何らかの形での取引先であったり、そうでなくても特に悪意がなさそうで侵害の度合いも軽微な場合には、最初から内容証明郵便を使うのではなく、配達証明のみの「ご通知」等でやんわりと注意する、という方法を取ることも考えるべきでしょう。
これで相手が謝罪して侵害をやめれば理想的ですが、無視して確信犯的に侵害を継続するようであれば内容証明郵便による「警告状」を送付することになります。
もちろん、相手が理不尽な反論をしてきた場合にも、後々裁判に至る可能性を見越して、こちらの主張を法律に基づいて具体的に記載した「警告状」を送る必要があります。
なぜなら、知的財産権の侵害はその範囲や内容が簡単には把握しにくいことが多く、侵害かどうか微妙な「グレー・ゾーン」もありますから、あいまいな主張を書いた場合、後で「そこまでは止めろと言われた覚えはない」などといった水掛け論を誘うおそれがあるからです。
また、侵害の警告を受けた側には、そもそも「自分の行為のどこが侵害なのか?」よく分かっていない場合も少なくないのです。
このように、知的財産権の侵害への対応としての内容証明郵便は、通常のクーリング・オフなどとは違い、専門的知識を踏まえた書き方が必要となります。
ですから、侵害を受けた場合には拙速に内容証明郵便を出す前に、ぜひ一度ご相談頂ければと思います。