また、契約書の作成は利用者側・権利者側のどちらで行うかが問題となりますが、相手が権利管理団体等であれば所定の契約書を示してくる場合が多く、その場合は利用者側で契約書の内容をチェックし、問題点があれば再交渉や利用条件の再調整が必要となります。
著作権処理に関する契約書としては、一般に次のようなものが挙げられます。
(それぞれクリックすると、契約書の説明にジャンプします)
- 音楽、文芸、脚本、美術、写真、映画、ビデオテープ、キャラクター、プログラムなど著作物のジャンルによって、それぞれ独特の規定が必要です。
また、著作権の中の様々な権利(支分権)のうち、コピー配布のために複製権と譲渡権だけとか、ライブ上演のために上演権・演奏権だけといった限定的な許諾を契約する場合もあります。さらに、他人の著作物の一部を引用する場合にもこの契約書が必要となる場合があります。
- 譲渡契約の場合「本著作物に関するすべての著作権を譲渡する」といった規定にして、あらゆる権利の譲渡を受ける内容にするのが一般的です。
(ただし「すべての著作権」と書いてあっても、翻案権と二次的著作物制作権は法律上含まれませんので、それも含めた条項にする必要がある点に注意が必要です。)
また、権利譲渡の対価の支払方法により、「当初にまとめて代金を支払ってそれで終わり」といういわゆる「買い取り型」と、「権利の譲渡を受けてからその利用による収益の○%を支払う、また、収益に関わらず最低○○万円を支払う(ミニマムギャランティ)」といった形の、いわゆる「権利管理型」とがあります。
- 文芸の著作物について長年出版業界で行われてきた契約で、著作権法でも第79条に独立して規定されています。
権利譲渡を受けないという点では利用許諾契約の一種といえますが、無断で出版する者に対して出版権者が独自に差止めや損害賠償請求をできる強い権利で、利用許諾契約と譲渡契約の中間的な契約と言えます。
出版権者は出版する義務を負うなどの責任もあり、契約書にも出版の計画についての規定が必要となります。
- まだ著作物は存在しませんが、委託者の考えに沿った著作物を受託者に制作させるための取り決めや、完成した著作物の納品方法、著作物に瑕疵(不都合な点)があった場合どうするか、対価(制作料)とその支払方法、そして、完成した時点で発生する著作権が誰のものになるのか、などを定めておく必要があるために必要な契約書です。
他人にすべて制作させる場合は純然たる「制作委託型契約」となりますが、他人と共同で制作する場合には「共同制作(開発)型契約」となり、契約書にはそれぞれ独特の規定が必要となります。
- アーティストなどの実演家に音楽を演奏させるといった実演を委託するための契約書です。
実演家という人間を拘束する必要がありますから、いつ・どこで・何を・どのように実演するかといった条件を定める一方、万一実演ができない事態になった場合のリスク負担、そして、実演した音楽などの録音の著作権が誰のものになり、どのように利用(二次的利用)できるか、といった点を定めておく必要があります。
- 著作権の許諾を受けるにしろ、譲り受けるにしろ、著作物は「商品化」して売買されなくては利益を生みません。この売買契約のための契約書が取引基本契約書です。
当然、何を・どれだけ・いつ・どこ・いくらで納入するかを定めなければなりませんし、売買される商品の著作権は誰にあり、売買に当たってどのような行為が許されるか、といった著作権法上の条件についての規定も必要です。
著作物が目に見えて触れる商品の形になっている場合(CDやDVD、キャラクター商品など)は卸売業者などの流通業者との間の商品取引契約書を交わすことになりますが(パッケージ型契約)、著作物がデジタルコンテンツでインターネット通信で流通させる場合には、通信事業者などとの間での「情報提供契約書」(ノン・パッケージ型契約)となります。
ノン・パッケージ型契約は従来の取引基本契約書とはかなり異なる規定が必要です。
- 著作権は「利用を許諾する権利」など目に見える形のない権利ですが、不動産や自動車の所有権と同様の「財産権」でもありますから、お金を借りるために質権を設定したり担保に入れたりすることができます。そのための契約書です。
- 未公表の作品(著作物)を他人(クライアントなど)に提示する場合、外部に漏れたり盗作されたりするのを防ぐ必要があります。
また、発注者が外部に制作委託する場合、途中で著作物や秘密の素材や情報が外部に漏れることも防がねばなりません。そのための契約書です。
制作委託契約の場合はたいていの場合、契約書の中に「秘密保持条項」を設けることが多いですが、別途に秘密保持契約書を交わす場合もあります。